ドキュメントスキャナADS-3600Wを試そう
BrotherのドキュメントスキャナADS-3600Wを購入したので自分で使うつもりの機能を試してみた。といっても各種の便利機能は使わないので、ほぼ基本的なスキャン機能の確認となる。
確認するポイント
スキャン時のオプションのうち、以下の点を確認する
- ファイルサイズ - 小〜大の5段階(以下ではサイズ1〜5とする)
- 解像度 - 300dpi、400dpi、600dpi、1200dpi
- カラー設定 - モノクロ、グレー、グレー256、カラー
- 裏写り除去 - あり/なし
その他については、カラー自動判別はしない、傾き補正はしない、明るさ・コントラストは既定値のまま、出力形式はjpgとした。
確認用のサンプル原稿には以下を使用させてもらった。

まんがタイムスペシャル2017年9月号 宮原るり「恋愛ラボ」p.23〜24

週刊ビッグコミックスピリッツ2017年NO.34 ゆうきまさみ「究極超人あ〜る」カラーページ

まんがホーム2017年3月号 辻灯子「敗者復活戦!」p.105〜106
裏写り除去の有無の比較
600dpi、グレー256、ファイルサイズ5の条件で、裏写り除去の有無それぞれのスキャン結果を比較した。原稿は恋愛ラボとした。

裏写り除去あり

裏写り除去なし

(参考) ScanSnap裏写り除去あり

裏写り除去あり

裏写り除去なし

(参考) ScanSnap裏写り除去あり
画像の上での描写が込み合っていそうなところを切り抜いてみたのだが、この結果はすごいと思う。
裏写りのなかでもトーンがかかった部分の裏写りはそれなりの画像処理をしないとうまくとれない。全体的な調整のみではScanSnapの出力のようなものになりがちなのだ。ADS-3600Wではオプションを指定するだけでそんな裏写りもきれいさっぱり、それでいておかしな強調がかかったりぼやけたりということもない。
もちろん薄いトーンが除去されてしまうケースなど、どんな場合でも除去しすぎないというわけではないが、軽く試してみた範囲ではおおむねよい結果になっている。
以下は除去しすぎになってしまった部分だが、右肱あたりのキラキラが欠けてしまっている。もっとも比較対象として示したScanSnap、Gimpスクリプトでの処理結果ではノイズを除去しきれていない。読むときは、どちらかというとノイズが残っているほうが気になる。つい、タブレットの画面を指ではらってしまったり……。

裏写り除去しすぎとなったケース(恋愛ラボ p.24)

(参考) ScanSnap裏写り除去あり

(参考) ADS-3600Wでカラースキャンして以前作ったGimpスクリプトで処理
(6年前に試行錯誤していたGimpスクリプトはバージョン2.8でも動いてくれた。でも、もう内容を覚えてない。)
ファイルサイズ指定の比較
600dpi、グレー256、裏写り除去ありの条件で、ファイルサイズを1〜5(小〜大)まで変化させてスキャン結果を比較した。

ファイルサイズ1

ファイルサイズ2

ファイルサイズ3

ファイルサイズ4

ファイルサイズ5

(参考) デジカメ撮影
ファイルサイズ1〜2はノイズが乗っている。3〜5は目視では違いがよくわからない。カラー原稿では3と4でいくらか違いが分かることもあるが、それでもはっきりと違うというほどではなかった。
なお、出力ファイルのファイルサイズは以下の通り。(単位はバイト)
指定 | p.23 | p.24 | 比 |
---|---|---|---|
1 | 1,626,954 | 1,360,986 | (1.0) |
2 | 2,101,020 | 1,727,813 | 1.2〜1.3 |
3 | 4,178,304 | 3,389,966 | 2.5〜2.6 |
4 | 6,555,255 | 5,315,152 | 3.9〜4.0 |
5 | 12,305,266 | 9,926,172 | 7.3〜7.6 |
カラー指定の比較
600dpi、ファイルサイズ5で、カラー指定をモノクロ、グレー、カラー、グレー256(ここまでのサンプルで使ったもの)としてスキャン結果を比較した。カラーのときだけ裏写り除去あり/なしの両方、それ以外ででは裏写り除去ありとした。

グレー256

モノクロ

グレー

カラー 裏写り除去あり

カラー 裏写り除去なし

(参考) デジカメ撮影
「グレー256」と「カラー裏写り除去あり」は出力結果がほぼ同じだが、前者のカラースペースはGrayScale、後者のそれはsRGBとなる。ファイルサイズもそれに応じて異なる。出力ファイルのファイルサイズは以下の通り。(単位はバイト)
指定 | p.23 | p.24 | 比 |
---|---|---|---|
グレー256 | 12,305,266 | 9,926,172 | (1.0) |
モノクロ | 11,860,559 | 9,669,187 | 0.96〜0.97 |
グレー | 12,305,266 | 14,725,669 | 1.46〜1.48 |
カラー 裏写り除去あり | 20,008,204 | 16,568,064 | 1.63〜1.67 |
カラー 裏写り除去なし | 31,149,100 | 31,576,903 | 2.53〜3.18 |
グレー256よりグレーのほうがファイルサイズが大きくなっているのは、グレーの出力が細かいドットの集まりのようになっているためにjpg圧縮が効きにくかったためだと思われる。
カラー原稿に対する裏写り除去の影響
前項ではモノクロ原稿をカラースキャンしたため、裏写り除去あり/なしの影響があまり前面に出てこないが、カラー原稿で裏写り除去を指定するとどういう影響があるのか確認してみた。

究極超人あ〜る 裏写り除去なし

究極超人あ〜る 裏写り除去あり

敗者復活戦! p.105 裏写り除去なし

敗者復活戦! p.105 裏写り除去あり
「あ〜る」は背景が一様な白色であるためか裏写り除去の指定の影響が出ていないように見える。「敗者復活戦!」のほうは薄い黄色だったのが除去されてしまっている。
まとめ
以前、現行のドキュメントスキャナを調べてからというもの、やはりこれまで使ってきたScanSnap S1500Mではきびしいなと思うようになった。実際のところ、スキャンにかかる時間がけっこうなものになる上に、後処理に要する時間もまたけっこうなものになる、ということで少々遠ざかってもいた。そして、その結果としてあふれる本棚。
では何に買い替えるのか検討するなかでADS-2800W/ADS-3600Wを使用しているという情報が少ないのには弱った。だが、考えてみれば複合機ではBrother製品が開く使用されていて情報も多い。スキャナ部分の評価についてはある程度参考になるであること、また、身近でBrother複合機を使用しているという話も聞いて、最終的にはここしばらくの断続的な忙しさに端を発するいきおいもあってADS-3600Wの購入を決めた。
安くはない買い物なので心配はあったのだが、予想外にまんが自炊向きの特性を持っているようで良かった。画像処理がハードウェア側で行われるのか、ソフトウェア側で行われるのか分からないが、どちらにしても今後も引き続きこの特性が保たれるとうれしい。
困ったところ
ただ、困った点がないわけではない。
一つはどうも白紙をスキャンできないように思えること。白紙除去というオプションがあって、これを指定しておくと白紙をとばしてスキャンしてくれる。けれどもこの白紙除去オプションを指定しなくても白紙をとばしてしまう。少なくとも手元ではそういう動作をしている。
これ、本を一冊まるごとスキャンすると、途中でページがずれてしまう。スキャン結果の確認がしにくいし、読むときも見開きにしていると途中でページがずれてしまうというわけで、かなり困ったことになる。幸いといってよいかどうか、まんがの場合は白紙が比較的少ないのでまんがのスキャンははかどっているが。
もう一つは、スキャン後にOCRにかけることができるようになっているのだが、これを使おうとするとけっこうな確率でControl Center(スキャナを操作するためのツール)が異常終了する。スキャン結果も出てこない。
動きからするとOCRからの出力が期待したものではないときに落ちているように見える。こちらはOCRを別にかければよいといえばよいのと、上の問題でOCRをかけたい種類の本のスキャンがはかどっていないので現時点ではそれほど困っていない。(OCRを別途かけるほうが細かいオプションを指定できるという面もある。)
あとは全体としてWindows向けのツールのほうが機能が多いらしいというのがあるが、私自身はそういった便利機能を使わないのであまり困っていない。OSの更新に対応してアップデートさえしてくれればよいと思う。
追記(2017-12-13)
白紙除去の問題は「iPrint&Scan」というソフトウェアを使うと回避できることが分かった。