Web系の開発を独学する人に: RailsによるアジャイルWebアプリケーション開発 第4版
レビューに参加させてもらったので発売よりも少し早く読むことができた。と、いうものの、仕事のスケジュールがかなりきびしい時期だったので部分的に。というよりもほんの少しだけ、といった程度の協力になってしまった。
それはともかく。レビューするとなると、普段ならざっくり飛ばし読みにしてしまうところまでじっくり読むことになる。そういうところも含めて読んでみていてふと思った。この本はwebアプリケーションの「開発」を始めたいという人のための入口にちょうどよいのではないか。
プログラミングの入門書でもweb系の題材が出てくることはおそらく珍しくないだろうと思う。ただ、そういった本の目的は、コードの一行一行を理解させること。だから、と言ってしまうと短絡的すぎるかもしれないが、多くはアプリケーションとして書いたことがきちんと動くというところが到達点になるのだと思う。
この本では、コードの一行一行の理解というところに焦点をあてていない。あ、これは前半のチュートリアル的なパートは、ということなのだけど、この部分においては、具体的なコードの細部について「きっとこのように動かすためのコードだろう」というあたりを付けられれば十分、それよりももう少し広い範囲を理解しようといった雰囲気がある。
本書は430ページほどあって、その半分ちょっとの240ページほどがチュートリアルと、本書を読みこなす上で必要となる最小限のRubyの解説に振り向けられている。そして、その前半部分のおよそ1/3あたりまで(Ruby自体の解説を除けば)コードらしいコードが出てこない。Railsのお約束に従ってアプリケーションを構築するばかりである。そして最初に書くコードはテストだった。
test "product attributes must not be empty" do product = Product.new assert product.invalid? assert product.errors[:title].any? assert product.errors[:description].any? assert product.errors[:price].any? assert product.errors[:image_url].any? end
あなたが作るアプリケーションは、あなたの手を離れた環境で動作する。コードが単体で動くわけではなく、フロントエンドのHTTPサーバとか、CSSなどの外部ファイル群とか、キャッシュとか、そういった関連の中にあって運用される。そんな中で、Railsを使ってする開発というのは、どんなもので、どういうふうにすればいいのか。それを学ぼうとするのがこの本なのではないか。
このような印象となったのは、この本で扱っているRailsのバージョンが3.1だという点にもよるところがあると思う。Railsが注目されだした当初、フルスタックであるという言い方をされることがあった。その面はより実務的に進んできているように思う。その分、旧来からのRailsユーザの一部(私のような時々Rails者)にはしばしば戸惑いを感じたりもするのだが、それらを拾い集めていくと、最先端ではないにしても、また詳細に理解できるとまではいかないにしても、実際のサービスの場面で必要とされる、あなたの目の前のコード以外の様々なものの様子をとらえることができる——んじゃないかな。と、そんなふうに思った。
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