ScanSnapとその仲間たち

本棚がいっぱいになり、そこらじゅうに本が積み上がっている。生活スペースを侵蝕しはじめてしばらくたつ。いつかドキュメントスキャナでやっつけてやる、と考えていた。また、そのつもりでいたので機材の準備だけは終えていた。あとは実践のみという状態。なのに、数か月も進展がないまま過ごしてしまった。

ところが、先日、なぜだか急にスキャンしたい気分になったのだ。自分で言うのもなんだが、これを逃すと次はいつになるやらわからないと思い、手順などうろ覚えのまま作業を始めてみた。最初のターゲットはA5 240ページ、本文二色刷りの技術書である。

手順は大きくわけて五つだ。

1. 表紙を外す

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ハードカバーではない本で、背が平らなものは、背の部分の表紙とページの間に糊を入れて固定している。まずはこの糊を溶かしてやる。この糊は熱を加えるとやわらかくなるそうで、アイロンやドライヤーでも処理できるそうだ。しかし、ホットエアガンのほうが作業が楽になるということで、ホットエアガンを使用した。

本にもよるだろうが、ホットエアガンから出る熱風を当ててじわじわ動かすこと30秒ほど。表紙が下にくるようにすれば、やがて勝手に剥れそうになる。最初は加減がわからなくて少し当てては引っぱるというのを繰り返したが、軽く浮いてくるのを待ってそっと外せば良さそうだ。

この通り、背の糊は簡単に処理できるのだけど、表紙の裏にある薄い紙(グレーとかブルーとかのアレ)とページとの間には別の糊が使われているのか、なかなかうまくはずせない。無理に引っぱるとページがやぶれそうにもなるしで、ずいぶんと時間をとられてしまった。

背表紙を残さなくてもよいなら次のステップから始めてもよいかもしれない。今回の本は技術書なので背表紙はなくてもよい(文字だけの場合がほとんど)のだが、これから他の種類の本を処理するということもあるので、今回は練習がてらにやっておいた。

2. 背の部分を切り落とす

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背の糊を溶かして表紙をはずしても、背に糊は残る。これを除去しないとページ同士がくっついたままになり、スキャナにかけることができない。また、本によってはある程度の枚数の紙をまとめて背部分で折り返す構造になっていることがあり、糊をきれいに除去できたとしてもスキャナにはかけられない。

そのため背部分を数mmほど切り落としてやる必要が出てくる。

この数mm切り落としはカッターを使って…… というわけにはいかない。スキャンするのがただ一冊だけならば気合いでなんとかなるかもしれない。でも、そうでないなら断裁機という紙束をまとめてカットする機械は必須アイテムである。手元には各所で評判のよかったPK-513を用意した。

この機械はそれほど力をかけることなくきれいに切れる。評番通り。ただし、カット厚の制限から240ページを一度に処理できなかったので、半分ずつ、二回にわけてカットした。

ここで注意。

カットしたものはばらばらにならないようにする。ページ順が変わってしまうと、本によってはとても面倒なことになる。もう一つ、ページ間にノリが残っていることがあるので一枚一枚チェックしておく。手間がかかるようだけど、これをやっておかないとスキャナでジャムってしまい、かえって時間をとられることになる。

断裁機にはカッターを手ですべらせるようなタイプもあって、そういうのはPK-513などに比べるとずいぶん安いようだ。ただ、本一冊を相手にするなら、今回使用したPK-513のようなタイプのほうが便利ではないかと思う(実際には比べたわけではないけど)。PK-513の大きな問題点は、この機械自体が置く場所をとること。重さも大きさもそれなりで、しかも斜めにハンドルが突き出ているため、置き場所や扱いには困る。

なお、amazonでは同じ型の取り扱いが終わっていた。次のものが後継機で、断裁位置を示すためのライトがLEDになったようだ(PK-513は電球): プラス 断裁機 裁断幅A4 PK-513L 26-106

3. ScanSnapでスキャンする

アイテム: ScanSnap S1500M
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カット済みの原稿を順番に気をつけてドキュメントスキャナにかける。最近は他社からも出てきているようだけど手元にあるのはScanSnap S1500M。自動給紙機能がある上に、複数枚読み込んでしまってもたいてい検知してくれるので安心して使える。

読み取りの設定は以下の通りにした。

  • アプリケーション Adobe Acrobat Professional
  • 画質 スーパーファイン
  • カラーモード 自動
  • 継続読み取りを有効
  • オプション 文字くっきり(コントラストが上がる)
  • オプション 原稿向きの自動検出をしない(たまに間違えることがあるので)
  • ファイル形式 PDF
  • 検索可能なPDFにする
  • 検索可能にする範囲 全ページ
  • 原稿サイズ 自動検出
  • マルチフィード検出 重なりで検出
  • 圧縮率 1(最弱)

カラーモードを自動にしていると、二色刷りでノンブルにだけ色がついているページなどでモノクロとして処理されていることがあった。が、ここではあまり気にしないことにする(技術書だし)。ちなみにファイルサイズは192MBだった。

まんがなどでは画質をエクセレントにしておいたほうがよいかもしれない。また、まんがのように検索可能でなくてもよいものもPDFでスキャンしたほうがよいそうだ(画質が劣化しにくいらしいのだが今回は確認していない)。

最初に順番に気をつけて、とはいったものの次の工程で、Acrobatを使ってPDFを編集すればリカバーできる。ほどほど気にかけておけばよい。まんがだとそうもいかないけども、技術書や小説ならノンブルがほぼ全ページに入っているわけで、並べなおしてもそう手間ではない。

4. PDFを編集する

アイテム: Adobe Acrobat Professional

ScanSnapにはAcrobatがついてくる。これでPDFを編集できる。ページがそろっていること。順番が正しいこと。向きが間違っていないこと、などをチェックする(原稿の向きを自動検知にしているとたまに間違った向きになることがある)。必要なら編集しておく。また画像だけ取り出すこともできる。

5. カバーや表紙をスキャンする

アイテム: フラットスキャナ

表紙やカバーはScanSnapにかけにくいので読み取り面がフラットなスキャナで処理する必要がある。ただ、これはまだやっていない。ちょっとめんどうなので何冊分かまとめて処理するつもりだ。

一冊処理したところでのまとめ

検索可能PDF化処理時間を除いて、1〜4の手順にかかったのが20分くらいだろうか。慣れればもう少しくらいは短くなりそうだけど、PDF化処理にはそれなりに時間がかかるから、結局はその時間による。何冊も連続してスキャンするのであれば一冊あたり30分くらいはみておいたほうがよいのではないかと思う。

さて、作業を終えて(まだ手順5が残っているけど)から問題になるのは、スキャン後の紙の処分だ。普通に古紙回収に出すのだろうけど、いかにもムダな感じがする。最初からPDF(など)で売ってくれればいいのに、とつい思ってしまう。値段は紙本と同じままでもいいし、少しくらいなら高くなってもいいかもしれない、なんて思うのだけど。

あ、でも一部のまんがでやっているような特定OS環境・特定バージョンだけでしか再生できないようなのは止めてほしい。そういうのは特定のPCでしか再生できないものが多いようで、そうなると読みたい場所で読むこともままならない。それはひどい機能低下だ。

ここまでの工程について参考にしたページをあげておく。

ふんぎりが付かなかったのには、本をうまく処理できないとまずいなと思っていたというのが大きい。ついついうまくやらねばと考えてしまい、気追いすぎて手が動かなくなる。

ただ、まあ、実際にやってみると、どうにもならないくらいダメな状態になることはそうそうないし、考えてみれば、万一そうなっても買い直せばいいのだ。もちろん、なかなか手に入らない本や高価な本というのもあるわけなので、そういう本はやっぱり躊躇してしまう。でも何でもかんでもスキャナにかけなくてもよいのだから、まずは一冊やってみるのがよいだろう。

本をスキャンしなくてもScanSnapはなかなか便利で使いでがあるので、やってみてめんどうだなとか、向いてないなと思ってしまったとしても問題ない(多分)。

その後、さらに数冊の本をスキャンしての追記をつらつらと

上ではスキャンモードを自動にして、カラーかグレーかを自動判別にまかせているが、これはあまりうまくないことがわかった。読み取りのクセがどうしても違ってくるのでいくらか気になるくらいに統一感がなくなる(個人差はあると思う)。また、モノクロの網かけなどで局所的に色が入ってしまうこともあった。Acrobatでマージすることもできるので、カラー部分とモノクロ部分をわけて、それぞれにモードを指定してスキャンするのがおすすめ。

裁断後の処理を十分にしておくのがポイントだともう一度強調しておく。断裁のときにはついついケチって、できるだけ切る幅を小さくしようとしてしまう。だがこれをやると百枚に一〜二枚くらいはノリが残るなどして二枚くっついたままの部分ができてしまう。うまくすると二枚重なったままスキャンされるだけで済む(その場で検出されたスキャンし直せる)が、どちらか一方を巻き込みつつスキャンしようとしてくちゃくちゃに…… となることもある(実際にあった)。

裁断面のチェックについては、お札を数えるときのようにして、ぐにぐにと裁断面を斜めにずらしていって、ゆっくりと指ではじきながら、目と感触で確認していくというのをやっている。これでけっこう検出できる。一通り終わったら、今度はずらさないままやはり指ではじいておくと、ひょっこり裁断もれが見付かったりする。まあ、まんがなど以外では十分に余白があることのほうが多いので、ケチらずにがばっといっておくのが実は最重要ポイントかもしれない。

技術書などで薄めの紙が使われていることがあるが、そういう本ではどうしても裏面がすけてしまう。ScanSnapでは光量や感度を調節できないようなので、これはどうにもならない(モノクロ読み取りなら調整できるようだけど、これは白か黒かの閾値の指定)。なんとかするにはソフトウェア的に処理するしかなさそうだ。ScanSnapの新機種で光量、感度、色調などの読み取り調節ができるようになるとうれしい(おそらくScanSnapは消耗品だろう)。

それでも読めなくなるほどではないし、まんがの単行本などはそこまですけないようだ。もちろん本によるだろうし、まんが雑誌だとすけがちになりそうな気もする。どうしてもきれいにやりたければフラットスキャナで黒紙あててスキャンするしかないだろう。あ、もしかして「片面読み取り」にして、片面ずつスキャンすると結果が変わったりするだろうか? 次にやるときに試してみよう。

あと細いところでいくつか。

  • 断裁機にかける厚さには限りがあるので、糊を切っていくつかの束にわけなければならない。このとき手持ちのカッターナイフがあったほうがよい。
  • エクセレントでスキャンすると、スキャン自体にスーパーファインのときの倍以上の時間がかかるようになる。文字がメインならエクセレントにまでしなくても十分だと思う。
  • 「継続読み取り」するときには、トレイが空いてきたら原稿を足すというのを繰り返して一冊まるごと、休みなくスキャンするようにすると少しテンポがよくなる。スキャンが進むのを待っている間に裁断面の(再)チェック。
  • 「表紙の裏にある薄い紙」はページ側と表紙側とにとりあえず切りわけておき(カッターナイフなどで)、断裁が終わってからページから剥がすとそれほど手間にならないことが多いようだった。