スパイク

松尾由美さんのスパイクを読んだ。

面白い。

雨恋なんかと同じか、ときによってはこちらのほうが面白い。この著者の本ではSF、あるいはファンタジーがかったミステリばかりを読んでいる。他のタイプの小説もあるのかもしれないけどよく知らない。

うまいなと思うのはSF的、ファンタジー的な設定にはそうつっこまず、不可思議なところはそのままにしてしまうけども、かといってご都合主義的になってしまったり、あるいは破綻してしまったりはしないところ。登場人物たちはそういう不可思義にまきこまれてしまい、時に翻弄されてしまう人々。

たいてい、終盤にさしかかるあたりで物語の行きつく先は見えてくる。ものによってはかなり最初のほうで分かっちゃってたりもする。けれども、その構造——まあ、人々の関係だったり物事の顛末だったりが明らかになるときには、ぐるっとひとまわりして帰ってくるような意外さがある。

その意外さというのも「うわー気付かったかったー」というようなものではなくて、うすうす気付きつつ、ただもうひとつふたつ何か足りないというあたりまで誘導された上でトンと最後の何かを示されるようなもの。「何か」というのは必ずしも真理のようなものではなく、したがって理解というよりも折り合いをつけられるというような感じ。

雨恋や九月の恋と出会うまでを読んで気にいっていて、スパイクはまだという方はぜひ読んでみて。

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スパイク 松尾 由美 (2002)