かくれオタク9割
Ar-さんの記事で知って、読むつもりで買っておきながら、書名の印象から二ヶ月かそこら積んでしまっていた杉浦由美子さんのかくれオタク9割[rakuten]をようやく読んだ。
内容は、バブル終焉当時に就職をした世代およびそれよりも下の世代の購買意識の実態を分析するというもの。そうした意識を支える志向とか生活スタイルも扱う。だから、現時点で20代前後から、私よりもちょっと下あたりがテーマの対象となる。
書名で「オタク」といいつつも、従来のいわゆる「オタク」としてくくられるようなマイノリティとしての立場を明確にできるような人々はひどく減少していて、すでに自分に好ましいもの(商品、仕事、生活、……)を求めるという点では、広くそのようになっていると述べている。まあ、みんな「オタク」であると。このあたりは開き直りという感じもする。
それはともかくとして、本書で興味深かったのは、バブル以降の労働環境の捉え方の違い。
会社組織の高齢化により、バブル頃までの世代がつっかえていること、同世代によるスキルのにぎり込み(若い世代にスキルを渡さない)、市場分析の恣意的運用、などにより、若い世代はそれ以前にくらべて非常に制限された環境にあるというようなことを思っている。つまり、経済面ではもちろん、仕事を楽しむという面でも状況は悪化していると思っている。
だが、本書によると、というか本書を読んだ印象では、こと女性についていうと良くはなっていないにせよ、バブル以前の状況と比較して、誤解を恐れずにいうなら差し引きゼロといったところであるようだ。こういう見方は率直にいってまったくなかったので、とりわけ面白く読むことができた。もっとも、扱われている世代の女性がこの本をどう読むとどう感じるのかも興味深いところであるが。
記述は女性についてのものがほとんどで、彼女らを通して同世代の男性が多少出てくる程度であるという偏りはあるが、全体として私自身よりも少し下の世代の、ある一面ではあるかもしれないが、意識の有り様に触れられたようで面白かった。それとともに、思っていた以上に、認識が乖離していたことには自分自身にちょっとがっかりした。