九月の恋と出会うまで

松尾由美さんの「九月の恋と出会うまで」を読み終えた。朝の電車で半分、昼休みに残りの半分、帰りの電車と家に帰ってからで最後まで。

以前読んだ雨恋のほうが好きかな——と思うのは雨恋を先に読んだからだろうか、などとふと思った。調子がよく似てる。

と、ここで思い返してみると、主人公は全編を通して翻弄されるというか、目的語的に扱われるというか、(プログラミングでいうところの)オブジェクト的であるというか、そういうふうに描写されている。ただし視点は主人公からのものであって、それは内にも向くが、どちらかというと外に向いている。そして、事件は外で起きていることも加わって、私の視点はついそちらに向いてしまったのだが、これはうまくつられたのかもなと思えてきた。

人々の思考(だけ)ではなく、感情でもなく、いわば「気分」のようなところにも視線を配るようにして再読すると、どこかすっぽ抜けたような感もあるこの本の印象はけっこう変わってきそうな気がする。そうして、そうだとしても構造的にはやっぱり似ているはずだと思える雨恋と対比させてみるとちょっと面白いかもしれない。

というわけで、しばらく後に再読してみようと思っている。他の本も読んでみよう。

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九月の恋と出会うまで 松尾 由美 (2007)