海の仙人
絲山秋子さんの海の仙人[rakuten]は文庫で170ページと、かなり薄い。取りたてて難しい文体ということもなく、むしろ読み易いほうだと思う。だが、読みんでみると、なんともいえず濃い空間が広がる。
内容は大人たちの出会いと別れを淡々と綴ったもの。大人のちのもとには「ファンタジー」という、なんだか分からないモノが訪れる。ファンタジー自身はいるだけで何もしない。自らそう言うようにただいるだけで役には立たない。たが、そうはいいつつも、大人たちは彼に探索の触手をのばしているような、あるいは、そこから何かとつながろうとしているような、そんな印象を受けた。
うしろ頭の左上あたりに浮かんでいるイメージのような、つかみどころのないところがある。薄い本なのになかなか読み進めさせてはくれず、ぐっと引き込まれるようであり、そうかと思うとあるところで壁を立てられてしまい、寂しさにおそわれるような、そんな物語だった。