アフォーダンス——新しい認知の理論

アフォーダンス-新しい認知の理論 (岩波科学ライブラリー (12))アフォーダンス——新しい認知の理論[rakuten]を読んで、特に印象に残っているところを抜き出すと、これは環境がそもそも持っている情報を私たちが取り出すことで認識が成り立っているとする考え方となる。そのプロセスの中で重要なのは動く物と動かない物を分けて扱っていることに加え、その分別を含めた認識のために自らの動きすらも利用されるということ。これは私たちの認識と私たちによる環境への働きかけに切り離せない関連があるということでもある。

これらの点は、古くから今に続く、外界からの刺激を受ける→脳の中で編集・再構成の上で再現し、その中で認識するといったモデルと大きく異るところであり、かつ、実に刺激的な考え方である、と思う。

プロローグに「読者は本書を読みおわった後に、見ること、聞くこと、触ること、嗅ぐこと、味わうこと、歩くことなどについて、いいかえれば自身と世界との関係について、これまでとはまったくちがう「感じ」を体験することができるはず」(p.3)だとあるが、まさにその通りだと思う。ただそれは「今までの○○はなんだったんだ」というようなものではなく、いちいちの捉え方に幅ができるというような体験である。

「アフォーダンス」では、アフォーダンス理論の概要だけでなく、提唱者であるギブソンがどのようにしてそうした考え方をつかまえ、また、どのような方法で実証してたかを解説している。比較的溥い本でおおむね読み易い文章なのであるが、ところどころで混乱が生じるのは、やはり従来モデルにどっぷりつかっているからなのだろうと思う。

この本は10年以上も前の本であり、現在この理論をとりまく状況がどうなっているのかは分からない。たしか一〜二年前あたりからネット上でも見る語になってきていると思うが、してみると何らかの動きはあるのかなと思える。今、どのように扱われているのかを知りたいが、さて、そうするためにはどうすると良いだろうか。