鹿男あをによし
昨年から積みっぱなしにしていた万城目学さんの鹿男あをによし[rakuten]を読んだ。
どうも体調その他がいまいちでちょっと目先を変えようと思って既読の軽めの本を読み散らしたりしていたのだが、気分的にどうもそれもどうどう巡りな感じがしてきたところで、ふと思い付いて手に取って読み始めたところ、なんだかんだと何時間かのうちに読み終えてしまった。
俯瞰すると形通りともいえそうだが、奈良の女子高校という舞台から大きくはみ出すことなく、学校生活はもちろん、歴史的背景や、ある意味での社会的価値感のようなものをうまく交じり合わせたところに面白味があるように思った。歴史的という点ではもう少し奥行きが欲しかったも少し思うが、これ以上にやりすぎるとバランスを崩すのだろうなとも思う。
ストーリーはいろいろなところで出ていると思う。後半にさしかかった青年が少女を見やり、少女が先生を見、人々が社会、人々、生き物を見、物き物が人々を見る。心のおき場所の在り様やそこから現れる表情は様々で、描き出されたものを通して楽しめる。そういってしまうといやらしいかもしれないが、つまり、フォーカスの前や後にある何物かを感じられるような作品だった。他の作品も読んでみたい。