雨恋

松尾由美さんの雨恋をを読み終えた。

クライマックスにさしかかったころ、ちょうどスパニッシュ・ワルツがかかった。この曲は調子のアップダウンがある、どちらかというと激しい曲なのだけど、その激しさがミスマッチでとても良かった。曲が終わるまでに読み終えてしまって、その後は余韻を重ねる感じになった。

もっとも、iPodはすぐに次の曲を流し始めたけれど。

ストーリーは、二匹の子猫と、若い女性の幽霊が住まうマンションの一室に主人公か転がり込むところから始まる。実は殺されたのだ、犯人が確かにいたのを知っている、犯人をしりたい、そんなことを言う彼女と主人公とのあいだで繰り広げられるミステリーであり、二人(と二匹)の触れ合いの物語でもある。

実に静かで、あまり救いのない、ただし悲壮感もない、厳然とした平衡を感得するような、こういってはなんだが、雨上がりに居合わせたような読後感が得られる。読み進めるうちに引き出される様々な感情や経験の記憶を、しばしフィールドバックさせて再び味わえる、良い物語だった。

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雨恋 松尾 由美 (2005)