スナップ写真のルールとマナー

日本写真家協会編のスナップ写真のルールとマナー (朝日新書 063)スナップ写真のルールとマナー[rakuten]という新書を読んだ。

タイトルに偽りはほとんどなし、とは言えるのだけど、期待した内容ではなかった。

写真を撮ること、公表すること、特にコンテストに応募すること。ときにwebページに掲載することや、あるいはblogに掲載すること。これらにおいて注意すべき法律面の事柄としての肖像権と著作権、関係者間での契約問題、守るべきマナー、許諾を得るコツ、撮影上のテクニック、などをそれぞれ独立に、あるいは二、三の事柄を関連付けてQ&A形式で説明しようとするもの。

これだけ盛り込もうとしているのでまとまりがなく、部分的な重複があり、おまけに複数人で書かれているため表現が少しずつ違ったり、同じようなテーマに思えるのに立場が違うことがある。さらに、「ルールとマナー」というわりに説明が情緒的にすぎる傾向があるし、原理原則あるいは判例あるいは法解釈といった(考え方に幅があるにせよ)一定の立場からの解説に乏しいので応用しにくく、自分で考える上でのヒントは得にくい*1

実のところ、法解釈を持ち出すと、あれはダメこれもダメとも読めるものになってしまいがちだったり、そうでなければ法のくぐり抜け方を示すことになってしまいがちだったりしそうなので、ある種の苦労の結果なのかなあとも思えなくはない。また、執筆者は弁護士ではないようでもある。原理原則のようなものを示しにくいとしても、法律的なことなのか、マナーなのか、執筆者の個人的なアドバイスなのか、せめてそういったところの切り分けをしっかりしておいてくれればもう少し使い易くなるのではなっていたのではないかと思う。

それから、写真技術そのものについての言及はまったく必要ないと思う。読み物としての幅を持たせるためなのかもしれないけれど、決まりきった言いまわしが出てくるだけで効果を上げているとは思えない。Q&Aの間々に写真がはさまれてもいるが、Q&Aとどういう関わりのもとで掲載されたのかの説明がないため単なるうめぐさになってしまっている。これらと各所に見られる重複をのぞけばボリューム的に半分くらいにはなるのではないだろうか。

とまあ、あまり良くないところばかり出してきたが、公表に関係して特にパブリシティ権がからむケースへの注意については参考になった。その種の権利が関係しうる写真については、いってみればおおめに見てもらっている状況が多少なりともあるわけで、そうしてみると、それら写真の公表においては自衛のためにも一定の制限を課しておく必要もありそうだ(二次配付はダメよ、とか)。考えてみればたしかにっていうような話ではあるけど、どうもそこまで考えてこなかったので。欲を言えば、ここからもう一歩すすめてCCライセンスの活用だとか(レッシグという名前が出てきたりもするのだし)、文化庁(だっけ?)の例のマークの利用だとか、そっち方面に進んでいればかなり良かったのになあとも思った(つまり、そういう方向での考え方を持てたという点で参考になったわけだけど)。

なお、巻末に対談記事が入っているが、これは蛇足だと思う。内容的に本文(Q&A部分)との重なりが大きいし、生の語りなのだろうけど「われわれプロはきちんとしているんだけど素人は……」というような語り口があったりするので変なひっかかりをおぼえるだけ。

*1 ついでにいうと、コンテストとwebページとblogの扱いが違っているがその理由がないとか、改変されるおそれがあるからblogはやめといたほうが良い(ここではwebページには言及されない)といった理由付けになっていない理由があったりとかもする——その種の技術的な知識にあまりなじみがない人々なのかも?