スコーレNo.4(続き)

読みかけだったスコーレNo.4の続き。

比較に出すのはちょっと違うかもしれないけど、恋は堕ちるものというをテーマにしたツ、イ、ラ、クよりも、むしろ鮮やかな堕ち方を見せられた。とりわけこちらは恋愛だけでなく、すべて堕ちるものだと言わんとするかのような気持ち良さがある。ま、堕ちる堕ちると言うとネガティブな感じになっちゃうけど、そうではなくて、自然な選択の結果というか、己の中の見えざる手というか、選ぶべき道を選ぶものなんだだとか、こうしてみるとNo.3まででの感想と真反対なんだけれども、全体を通して実に良いお話だった。

「あなたはもっと自分に自信を持ちなさい」「私たちはあなたの目を信じてるの」こういう信頼の言葉というのは、めったなことでは受けられるものではない。ああ、こういうの欲しい。もらったらうれしいよね。なんて思ってしまった。過去にはあったのかもしれないけど、大切にしてこなかったのかもしれない。ともあれ信頼と評価は難しい。

主人公の女性(No.4では女の子は女性になっている)は夫婦、姉妹の間の人と人との関係性に幼いころから疑問を持ち、その経験から(あるいは彼女たちとともに過ごす生活の中から)執着できない自分への劣等感にさいなまれる生き方をしてきた。こう在らねばらならないという考え方。そこから、ただそう在るだけなのだという考え方へのシフトの瞬間。視界が開けるような、それまでのくすんだ色がクリアになるような(逆にギチギチとしたダイナミックレンジの狭さが、瞬間に解消されるような)突き抜け感がしみわたるように感じられる。多分、こう在るのが自分だというようなのではないところが突き抜けているだろうなと思う。自分が出てくると同種の自意識の裏表に思えるから。

この本はちょっとした快感だったかも。

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スコーレNo.4 宮下 奈都 (2007)