刺青白書

書店に行ったら樋口有介さんの刺青(タトゥー)白書 (創元推理文庫)刺青白書[rakuten]が出ていた。帯に柚木草平シリーズとあったのと出掛けに本の一冊も持たずにきてしまったのとで、迷うことなくってほどおおげさな話でもないのだけど、その場で購入した。行き帰りの電車の中で半分よりも多くを読んで、帰宅後に残りを読んだ。

通例では中年にさしかかったくらいの美女と、20才前後くらいの、こちらは不美人ではないもののそれよりもむしろ魅力あるクセの目立つ女性とが登場する。前者に色目を遣うのはもう彼の病気であって、でも、ストーリー上はそううまくいかない。他方、後者へはどうかというと、まったく色気を出さないわけではないのだけど、どちらかというと巻き込まれる形になりがちで、好かれつつもなんやかやと振り回される「おやじ」になってしまう。

今回は今までの本と違って柚木草平シリーズではあるのだけど、いわば外伝のようなもののようだった。相変わらず美女が登場するのだけど、従来のような形で接するのは一人だけ。しかも中年ではなく普通の大人の女性。若いほうはというとなかなか接点が見えてこない。それもそのはずこの本ではストーリーが二人の視点でそれぞれに進むからで、接するポイントは当然あるものの、ちょっと肩透かしをくらったような印象でもある。

これまでも若さ、あるいは若さへの憬れというようなものが描かれてきたように思うのだけど、本作はいっそうその趣が強かったように思う。今までの本で描かれることがなかった部分にある意味踏み込んでみたといったところもあるのかも。ただ、やっぱり可愛いおやじである柚木氏の活躍に期待していた部分があったので、その点でちょっともの足りない。

東京創元社によれば今夏から第二部として三冊の出版が予定されているようなので、またの活躍を期待したい。