晩夏に捧ぐ

成風堂書店事件メモシリーズの二冊目、晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編> (ミステリ・フロンティア)晩夏に捧ぐ[rakuten](大崎梢著)を読み終えた。でもって、予想外に感動してしまった。本や本屋が好きという人におすすめしたい。

ミステリー的な水準はまったくもって判断がつかないけれど(経験が少ないので)、ページが進むにつれ、引き込まれていくようだった。最終局面は通勤電車の中で迎えたが(というか、仕事の休憩時間中にさしかかりそうになったのだけど、途中までしか読めない時間しか残っていなかったのでぐっとこらえた上でなお電車の中、だったりするのだが)、それでもなお感動し、そのままクライマックスを再読してしまった。

前作は短編だったこともあって、ガチャガチャとした印象があったし、ちょっと軽い感じもしたが、本作では文章が洗練されて読み易くなっており、登場人物を絞った長編ということで人物像の深みがぐっと増したように思う。

私は「杏子さん」のように本屋に行くたびに3時間も過ごしたり、棚から意図を読みとったりはしないしできないが、それでも本屋にはよく行くし、場としても好き。こうこうこうだから、と言うのは難しいけれど「本」という形のものがそもそも好きで、幸運にも本屋にならぶ雑誌や本に関わることもできた。まあ、技術的なものばかりなので創作といえる部分はごく限られてはいるし、本屋がたきだといいつつ本屋のバイトは店長と折り合いをつけられずにごく短い期間で辞めてしまったこともあるのだけど、ともかく、そういういろんな経験の中でちょっと見落としていたところに光を当ててくれたという点が嬉しくて、そしてこの作品を良いなと思った。