配達あかずきん

若竹七海さんのヴィラ・マグノリアの殺人を読み終えたのち(これも面白かった)、本屋さんを舞台にした配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)配達あかずきん〜成風堂書店事件メモ[rakuten]を読んだ。大崎梢さん。

本屋さんに訪れる客と店員と本の間で生じるちょっとしたミステリーを店員が解き明かすというもの。ミステリーというのは、たとえば、ある本を手にとったのをきっかけにその客が姿を消してしまったというような事件性のありそうなものから、本を勧めてくれた店員にお礼をいいたいが名前が分からないので勧められた本をたよりに探り当てようとするといったほのぼのしたものまでで、計五編の短編。

進行が淡々としているわりに登場人物の言動が鮮明という印象を受けた。それによって少々バランスが悪いところもあるように感じたりもしたけれど、本屋さんで——本に関わって暮らす人々とのやり取りが微笑ましく見えて全体としては好印象。あと本屋店員さんの裏方仕事もちょっと分かってこれも楽しい。身近な物事ほど裏側は興味深く見えるようにも思う。

もう少し本の蘊蓄が出てきても悪くないなと思いつつ、続編の予定があるようなのでさらなる展開を期待したい。

追記(2006-09-07): 晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編> (ミステリ・フロンティア)晩夏に捧ぐ〜成風堂書店事件メモ(出張編)[rakuten]かな。今度は長編らしい。