ブックカフェものがたり
ブックカフェものがたり[rakuten]という本を読んだ。
この本でいうブックカフェというのはわりあいおおまかにとらえられている。というより、これという定義のある語ではないからというほうが当たっているようであり、ごく乱暴にいってしまえば書棚のある喫茶店やカフェ、あるいはその逆となる。この本に登場するのは書籍販売を売り上げのメインにしているところ、雑貨の一部として書籍を扱っているところ、書籍は基本的に閲覧だけというところ、閲覧に加えて貸本もしているところ、など様々。
それぞれのブックカフェで生活をまかなっているところもあれば、ある種の広告媒体としてとらえている人がいたり、副業としての営業や、ほとんど趣味の店というものもある。そうしたブックカフェオーナーがどのような経緯で起業し、どのような方針・方策で店を育て、何を目指していくのかをインタビューしてまとめている。
ブックカフェの背景に一歩踏み込む形で紹介するという見方をすればブップカフェガイド本と言えなくもないが、普通に読むなら、やはりガイド本ではないだろう。もし自分が、と考える人のための本である。副題には「本とコーヒーのある店づくり」とあることからもそれはうかがえるが、書名からの印象は少し違うように思う。私も当初は違った内容だと思っていて、扱う店が東京・大阪・京都に限られているのを知り興味を失っていた。その後、ちょっと毛色の違う本らしいと知り、改めて読んでみたくなりこうして手に取った。
個々のお店のストーリーは興味深く読みつつも、やはり個々の経験であって普遍性はなく、互いに違う意見が見られたりもする。まあ、それはそういうものだろうと思う。また、それぞれのスタンスや利益の出方にもちろん違いがあるとはいえ、今現在、続けているという点でみな成功者であるとすれば、これはみな成功話であって、つまり参考にできる点も限られてくる。とはいうものの、本気の喫茶店めぐり、カフェめぐりをしてきたわけでもなかったため、一冊の本という限られた中であってさえ様々な形態が存在していることに刺激される部分はあった。
何事にもいろんな形はあるのだろうけれど、対価を得ようとするとなると(とんでもない資産を持っているのでもない限り)選択肢なり、線引きの仕方なりは自ずと限られてくるのではないかと思う。少なくとも自分の消費行動を振り返ればそう思える。そういった意味で、どのあたりでがんばっている人々がいるのかを知ることができたのはシンプルに面白かった。
一方で、共感とまではいかないまでも、店づくりのスタイルから興味をひかれた事例はわずかに一つ二つばかりであり、自分ばかりを基準にできないとはいえ、やはりそういった難しさの伴う仕事であるのかなとも思った。嗜好品をメインに扱う喫茶店や一部のカフェ(カフェの定義って何だろ?)は、そもそもがそういうものであるといってしまえなくもないだろうが。
「もし自分で」という人のための本だとはいったものの、今の自分に「もし自分で」があるかというとよく分からない。けれど楽しめる本だったなと思うと、あれ、そうでもなかったのかな?