博士の愛した数式
博士の愛した数式[rakuten]の著者の小川洋子さんに新設された日本数学会出版賞が授与されたとのこと。
読売文学賞も受賞した小川さんの小説「博士の愛した数式」は、交通事故の後遺症で新しい記憶が80分しか持たない数学者と家政婦の母子が、数字が持つ魅力を学び合いながら心を通わす物語。幅広い年齢層に読まれ、数学を文学に取り入れた新しいスタイルの小説として注目された。
[YOMIURI ON-LINE 2005-03-30より引用]
この本は昨年の9月に読んだ。たしかテレビ番組か雑誌の記事かで「大人が泣ける本」みたいなくくりの中で紹介されていたのだったと記憶している。たしか、ちょうどクサッているころで、普段あまり読まないような本を読んでみようというのもあって手に取ったのだった。
読んでみた感想——まあ、ずいぶん前のことなので細いところは覚えていないが、覚えている限りでは、泣けはしない。というか、ストーリー全体における人間関係や数学との関係によって描かれている何かがあるとしても、正直言って私はよく分からなかった。その面での感想はふーんで終わり。
私は、この本で良く表現されているのは「理解する」ことの楽しさとか嬉しさだと思う。特に実生活なんかから離れた知識欲を満たすような活動から得られる楽しさを表現したかったのではないか。この本を読んで「普通の主婦が数学のわけわからん記号や式に心奪われるなんて現実離れしている」というような感想を持った人もいた(そういう書評を読んだ)のだけど、で、まあ、それは人それぞれの感じ方だとは思うのだけど、なんというか数学に限らず、ただただ理解したい何かを理解できたときの喜びというのは誰でも経験があるのではないかなと思う。
そういう獲得の瞬間の気持ちだけではなく、理解に近付いていっているときの実感、あるいは少し踏み間違えると失ってしまうかもしれないというようなスリル。読みながらそういうときの気持ちが呼び起こされたのをとても良く覚えている。