若者の法則
書名から何らかの法則または法則らしきものの提示を連想したのだが、そういう内容ではなかった。いくつかのトピックからなるエッセイ集のような形をとっていて、収録されているトピックが「確かな自分をつかみたい」の法則、「どこかでだれかとつながりたい」の法則、「まず見かけや形で示してほしい」の法則、「関係ないことまでかまっちゃいられない」の法則、「いつかはリスペクトしたい、されたい」の法則という六つのタイプに分類されている。
これらトピックから感じたメッセージは二つある。一つは、「大人」は若者を理解できないといって早々に諦めてしまわず、若者には若者の事情があるという(つまりその内容に理解を示すかどうかは別として若者なりの考え方が存在し得るのだという)点を理解しようということ。もう一つは、今の若者の姿は「大人」を見てきた結果であるのだから、若者に苦言を提したりする前にまず「大人」が見本を見せようよということ。こう言ってしまうとありきたりな感じになってしまうが、著者の実体験をもとにしたトピックを重ねていること、それぞれのトピックはせいぜい三ページほどであること、具体的なヒントとを示すこと、などが特徴になっていると言えると思う。
中にはなるほどねえと思ったところもあったけれど、全体としてはパッとしない。というのはおそらく想定されている読者層と少し外れているからだろう。今の自分はこの本でいうところの若者とは少し違いそうだし、そうかといって大人にも入らないように思える。まあ、こう言うとこの本の中の若者の言い分と重なってしまうのだけど、実際、どちら側の言い分も少しずつ分かるし、一方ですべては分からない。ただ一つ、人生には、ポーズボタンも再スタートボタンもある。このことを若者に、大人が身をもって示してうる必要がある。
(183ページ)という記述にはっとさせられた。
大人にとっては若者を理解するきっかけまたはヒントになるかもしれないし、若者にとっては(この本の若者像は偏っているよと思うかもしれないけど)大人が若者を理解しようとするときに生じるコストを知ることができるかもしれない、といったあたりで手に取ってみても良いのではないかと思う。