「名誉毀損裁判」と「勝手に撮るな! 肖像権がある!」

名誉毀損裁判―言論はどう裁かれるのか (平凡社新書)名誉毀損裁判[rakuten]に続けて勝手に撮るな!肖像権がある!勝手に撮るな! 肖像権がある![rakuten]を読んだ。前者はたつをのChangeLogで見て読んでおこうと思ったためで、後者はしばらく前に書店でたまたま見かけたのを積んだままにしていたのを思い出して。

どちらも過去に起きた事件とそれに対する裁判の行方をベースに話が進められていて、特に裁判所の判断がどう変化してきたか、またそれに対するメディアの反応がどうであったかが一つのポイントとなっている。似たような構造になっているが「名誉〜」では個人による表現についてもいくらかは語られているのに対して、「勝手に〜」のほうではメディアや警察などによる撮影および公表に関して個人による写真が使われた事例が取り上げられているのみで個人による表現については記述がないというような違いもある。前者は新書であり出版されたのが今年、後者はハードカバーで出版時期が2002年ということで、そういった違いが出てきているように思える。

個人による言語表現はすでに問題となりつつあるが肖像権についてはどうなのだろう。「勝手に〜」では写真については撮影と公表のそれぞれに許諾が必要であって、公益のための報道などである条件の下で許諾なしの撮影や公表が可能な場合もあるが、基本的に許諾がなければどちらもできないこと。許諾が必要な対象は人物だけではなく他人による所有物にも及ぶことがあること。私有地内での撮影などを制限することが可能であること。水着やヌードなどについては特に扱いに注意を要すること。こういったことをメディアなどによる行為を対象に説明されているが、個人での撮影などについても参考にできそうだ。メディア関係の事件であっても判例をもとに裁判が行われているということで、おそらく基準といったものは作れなくて、安全のためには許諾をとりましょうというようなことになるのだろうが。

「勝手に〜」では2002年ワールドカップの入場チケットにおいて入場者が肖像権を主張しないことへの同意がとりつけられている事例が紹介されている。このように被撮影者の意識が多様になっていることを考えるなら言語表現だけでなく写真などについても覚悟(少なくともある程度の知識)が必要になりそうだ。そう意味では個人による表現(できれば表現全般)をもう少し扱っていてボリュームも新書くらいの書籍か何かがあると良さそうだが、ざっと検索したところでは見付けられなかった。