ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?

1999年に出版されたThe Promise of Sleepの邦訳がヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?[rakuten]。内容は快適睡眠のすすめとかぶるところが多いが、読み物としてはこちらのほうが読み易いように思う。たとえば睡眠障害についての社会の認識の低さがもたらす恐さは、本書のほうがよく伝わってくる。

この本では睡眠負債という考え方を紹介している。大雑把に言うと、不足している睡眠時間の累積ということになると思うが、返済しないと減らないというところにポイントがある(無限に増えるわけではないようだし、負債額と返済額が必ずしも一対一には対応しないようだが)。そして返済するには眠るしかないらしい。起きている間、負債は増え続け、夜眠ることで返済される。人それぞれ必要な睡眠の量は違っているから負債の増え方も違ってくるわけなのだけど、どれくらい重い負債を背負っているかは昼間の眠気を計ることで知ることができる。そのための方法の一つとしてエプスワース眠気尺度というのが紹介されている(243ページ)。次のような簡単なもの。

  • 座って本を読んでいるとき
  • テレビを見ているとき
  • 劇場や会議の席など、ほかの人もいる場所で何もしないでじっと座っているとき
  • 一時間続けて車に乗っているとき(運転はしない)
  • 午後ずっと横になっていてもいいとき
  • 座って誰かと話をしているとき
  • 昼食(アルコール類はなし)のあと、じっと座っているとき
  • 車に乗っていて渋滞に巻き込まれ、数分停止しているとき

これらのシチュエーションで眠くならなければ0点、たまに眠ってしまうなら1点、わりと眠ってしまうなら2点、ほぼ確実に眠ってしまうなら3点をつける。合計点が0〜5点なら「睡眠負債はセロか、あってもごくわずか」、6〜10点なら「中程度の睡眠負債がある」、11〜20点なら「重い睡眠負債がある」、21〜24点なら「睡眠負債は限界に近い」と判定される。近頃の自分を考えてみると、日常的に経験しないシチュエーションもあるのだけれど、だいたい10点前後の得点となりそうで、どうやら睡眠が不足ぎみということになる。実際、無気力感やだるさを感じることがないわけではないのだが、その原因の一つには睡眠の問題があるかもしれない。

この本では三週間かけて行う睡眠改善プログラムを提案している。自分にあった睡眠時間や負債の増え方・減り方を調べ、それに合った睡眠習慣を作ろうというもの。今はあまり余裕がないのでプログラム全体を実施することはできそうにないが、最初のステップである睡眠習慣の把握についてはやってみたほうが良さそうだ。

訳者のあと書きには病院で睡眠検査をしてもらったときのレポートがあって、こちらも興味深い。「脳波、眼球運動、呼吸、いびき、心電図、酸素飽和度など、数多くのデータ」を取って、総合的に判断してもらうのだそうだ。意外にも保険がきくようだし、一度調べてもらうのもよいかもしれない。