死ぬ瞬間—死とその過程について

死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)死ぬ瞬間—死とその過程について[rakuten]の原題はOn Death and Dying。原題と邦題に違いがあるのだが、実はこの本が訳されたのは二度目で「死ぬ瞬間」というのは最初の訳でつけられたもの。この題がすでに広く流通してしまっていたために今度もそれを使わざるを得なかったとのこと(ただしより素直な訳がサブタイトルとして採用された)。否認と孤立、怒り、取り引き、抑鬱、受容という死の五段階説を最初に論じた有名なものであるというのは本書を読む直前に知った。

本書のベースとなっているのは200人以上の末期患者に対して行われたインタビューである。そのインタビューの様子を紹介しながら、死に到るまでに患者自身を含めた人々が何を思い、何を感じ、何を考え、そして相互にどのようなことができるかをまとめたもの。特に病院のスタッフに何ができるかを論じようとしている。

もともとは医療関係者向けの読み物なのだろうけど、とても興味深い内容だった。患者、家族、医者、病院のスタッフらが相互にストレスを与えあっている様子がとてもリアルに記されている。死に際しての信仰の力のようなものも少し見える(私には理解はできないが)。信仰というよりは信念だろうか。

続編があるようなので、それも読んでみたいと思っているところなのだが、原著者が後年オカルトに傾倒してしまったというのが気になる。本書はそうなる前のものだが、他のがどうかは調べておいたほうがよさそう。