エコノミストミシュラン

エコノミスト・ミシュラン本書[rakuten]は253ページからなっていて、前半は大学の経済学部の教授・助教授の三人による語らい、後半は30冊ほどの経済書の書評とい二部構成になっている。前書き「本書のねらい」によれば、「日本の経済論壇では率直な批判と評価がおこなわれていない」から、これまでにない、他の経済書のガイドとは「一線を画した明確なガイドを目指し」、それにあたっての評価の基準を「経済学の基本」と「良識」に求めたとある(ただし、それぞれが具体的に何を指しているかは、客観点な意見としては出てきていないように思える)。

今のところ前半の半分くらいにざっと目を通したところなのだけど、どうも難しい。どうやら後半で取り上げられているような本を最低でも三〜四冊は読んでいて、読んでいるというだけではなくてある程度読みこなせるくらいの前提知識がいるようだ。と、一度は思ったのだけど、前半125ページあるなかに脚注が161個。人物紹介とかもあるのだけど、ともかく一ページに必ず一つは注があるようなことになっていて、それはつまりそれくらい補っておかないと、想定される読者には読みこなせないだろうという判断があったのかなと想像できる。しかも、それだけ注が入っていてもなお、私には分からない用語が出てきている。結局、私にとっては「よくわかる経済学」のような本(「よくわかる経済」ではない)をまず読んでから改めて読むべき本なのかなと思えてきたところだ。

で、その前半の語らいの部分なのだが、どうやらエコノミストを構造改革推進派とリフレ派の二つに大別して、著者らリフレ派の視点からの構造改革派への反論というところをねらっているらしいことはわかった。形式としては対談のような形をとっていて、三人のエコノミストと進行役らしき人とで話をしていくのだけど、この登場人物の間での意見のやりとりは一切ない。互いに互いを認めあって、あっちの連中のここがダメ、あそこがダメと語りあっている。第三者的な見物人としての読者がいるのだという意識は感じられず、たとえて言えば、部活の合宿の夜に仲良しグループのメンバーが集まって、ひっそりと他のグループのダメ出しをしているような感じ*1。そんな語らいが延々125ページ分も続く。しかも語られたままを文字にしたような体裁になっているため、一応はキャプションが入っているのだけど筋道立ったストーリー展開はなく、一方で話題自体は広範に及ぶため非常に雑然とした印象である。

形としては理由を挙げてダメ出しをしてはいるのだけど、交わされる会話の流れから、どうにも説得力がない。まあ、それは私が経済学のなんたるかを知らないからなのかもしれないけれど。もう少し時間がたって(その間にもう少しくらいは勉強して)から読み返してみるとこれはこれで面白いかもしれないが、書名から想像されるものを求めてこの本を開くと、さて、どうだろうか。もうちょっと違うものを期待していたのだけど、はずれたかな…。

*1 そんな感じであるから、そこで会話を交わしている人々は、読者に対して彼らと同程度の知識を持っていることを暗に要求している……ような気がする。