反論の技術[rakuten]は前に読んだ議論のレッスンの中で紹介されていた本。読まねば読まねばと思いつつなかなか進まなかったのだがようやく読み終えた。大変面白かった。
「反論の技術——その意義と訓練方法」というのがサブタイトルまで含めた本書のタイトルなのだが、そのタイトルの通り、教師が生徒を訓練する方法の一つを示すという内容になっている。全体は三つの章から構成されていて、I章では「反論」そのものの重要性とともに「反論の訓練」をすることの重要性を説いている。II章では教師自身が反論の技術を身につけるための自修法を示し、III章で生徒を訓練するための一つのモデルとなる授業の進め方が紹介される。
II章で紹介されている自修法というのは「面白い反論」のスクラップブックを作るというもので、非常に興味深い。単に反論をかき集めるのではなくて、自分が気にいったものを集めていく。そうした上で、それらを何度も読み、チャンスがあれば(どこかで耳にした主張に頭の中で反論してみるなどして)真似してみる。あるいは、集めた反論に反論してみる(詰め反論?)ことで、反論に必要な意識を高めるというのである。これは気にかけておきさえすればすぐにでも実行できる方法であるし、さほど退屈なものでもない。いつも読んでまわっている日記の中にも集めがいのあるものが少なくないわけでもあるし、今日からでもやってみることができる。
ところで、この本で扱う「反論」は、先行する主張と反対のことを主張するようなタイプのもの(本文中では主張型反論と呼ばれる)ではなくて、先行する主張における論証が正しく行われていないことを示すというタイプのもの(同じく論証型反論)である。つまり「AはBだ」という主張があったときに、「いやそれは違う、AはCだ」というのではなくて、「AはBだと言うが、それはこういう点でおかしい」という主張をすることを意味する。
議論の中で主張型反論を行うと、議論がよりメタな方向に進んでしまってもともとの論点がぼやけてくる(あるいは主張同士が平行線上をつっ走ることになる)という弊害がある。それに対して論証型反論を行えば、先行する主張の妥当性(論拠の正しさ)を検証することができる。ただし、論証型反論のターゲットは主張そのものではなくて、その主張を支える部分であるから、先行する主張が「反論」にたえられるかどうかによらず、主張そのものが妥当かどうかの判断はできない(順番に切り崩していくことはできるだろうけど)。結局は両方のタイプの反論を行わなくてはならないのだが、限られた時間の中で修得するなら基礎体力になり得るという点で論証型反論だろうとしている。「限られた時間で」というのはつまり授業の範囲でということで、主張型反論を学校の授業の中で扱うのは適当ではない(議論をかみ合わせるところまで持っていけない)ということである。