午前零時のサンドリヨン 2
ギークだ、と彼が再び呟く。
「さっきからなによ、ギークって、どういう意味? 日本語で話してくれない?」
「ルビーが入ってる」(相沢沙呼「午前零時のサンドリヨン」262ページ)
午前零時のサンドリヨン[rakuten]を読んでいたら、思わぬ出会いがあった。とはいえ、その手の話題がテーマではなく、これは高校を舞台にしたミステリ。
話の運びにはやや固さがあるように思う。だが、それとは関係ない、物語の上でのカクカクした距離感に、少しずつ少しずつひきこまれていった。主人公の、あの時期の、あの青臭い、ぎこちない感じも好もしい(だんだんそう思えてくる)。最後は急に伸び上がってしまったかな、と思うと、いくらか惜しい気持ちにもなった。
次の本が出たらまた読みたい。
完全恋愛
完全恋愛[rakuten]はの著者は牧薩次さん。けっこうなボリュームがあるので二、三日に分けて、間にいろいろはさみながら読もうかなんて考えていたのだけど、読み始めたらいきおいに乗って、そのまま読みきってしまっていた。
ある少年が老いていくまでというすごく長い期間を扱っていることもあり、盛り上がりどころももちろんありながらも、ゆったりとした時間の流れを感じるようなお話。ただ、クライマックスは「うはー」という感じだった。こりゃすごい。
ミステリ系を読み始めるきっかけであった「容疑者Xの献身」を読んだときにも「やられたー」という気持ちを味わったのですけど、今度のもそれにおとらない「やられたー」。
物語の始まりは戦時中なので、正直、ちょっと苦手かもと思いながら読み始めたのがいつの間に乗せられちゃったのか。amazon.co.jpのレビューにもある通り、とある作家さんが一枚かんでいる。この方の他作を読んでみたくなった。
秋期限定栗きんとん事件
米澤穂信さんの小市民シリーズの新作である
秋期限定栗きんとん事件の上巻[rakuten]と
下巻[rakuten]を読んだ。
内容は…… いつもの通り、でもないか。別々の道を歩むことになった二人のそれから。小佐内さんの、なんていうのだろう、ブラックさというのともちょっと違うし、いけずってのも少し外していそうだし、やっぱりコケティッシュ、なのかしら。ともかく、またもしっかり楽しませてもらえた。
トーキョー・クロスロード
濱野京子さんの
トーキョー・クロスロード[rakuten]を読んだ。
きっかけはhirax.netの記事だが、紹介文から受けたイメージと、本を読んだ感想はずいぶん違ったものだった。違ったものだったが内容はとっても良かった。
若くて、せつなくて。ふりかえってみると変化の体感速度、感触、認識のズレというか、見掛け上の違いというか、そういったところが印象的だった。ネットワークの相互運動の見え方への戸惑いだったかもしれない。パラパラと裏返り続けながら落ちていく玩具のような風景が見えた気がした。
シンプルともいえなくないなかで、何をどのように感じとっていったのかな、と、そこら辺で自分に立ち返って、どーーーだったかなぁ。って。
キャベツの新生活
「ぼくたちはきっとすごい大人になる」を店頭で見掛けて、面白そうな本だなと思ったのだけどその場では買わなかった。後でamazonで調べてみるなかで、同じ著者の別の本をながめていて、こっちのほうが合いそうだなと思って先に買ったのが有吉玉青さんの
キャベツの新生活[rakuten]。
基本的には帯やamazonにあった紹介文によって判断したのだけれども、いやはや、ぐるんぐるんと巡る物語であった。つかみどころがないなあなんて思っているうちに引き込まれていった。ちょっと考えらさせられるところがありつつ、面白いお話だった。
ちょうど仕事の書き物でそんなあたりを考えていたせいなのだろうけれど、パイプとかリダイレクトのことを連想した。まあリダイレクトというかdup(2)とか。
内容に触れるとネタバレしそうなのであまり書けない。多分、私と読書傾向が似ている人は楽しめるのではないかなと思う。
凸凹デイズ
小さな小さなデザイン会社に大口の仕事がまいこんでくる。ただし、ともにコンペで最後まで残った、いわばライバル関係にあった会社と組むことが条件。日々の仕事には困らっていないものの、ちょうど割いた時間分だけの儲しか出せない状況にある。その状況を打開できるかもしれない話でもあるのだが。
このデザイン会社「凹組」は開業して10年ほどの会社。開業時のメンバーである二人、まとめ役の大滝と天才肌の黒川は30代の男性。それにまだまだ新米の女性デザイナーの凪海を加えた三人が全人員。そんな「凹組」の、これまでの10年と、これからを描いていく。
テーマは働くこと。仕事をしていく上ではいろいろあるよねってなところを、ある程度は経験を積んだ大滝たちと、まだこれからの凪海が乗り越えていく。実際には三者三様であって、三人の間にすらいろいろな事情が交錯する。
私自身、デザイン会社のようなもろにアーティスティックなものではなのだけれど、わずか数人の会社で仕事をしていることもあって、読み進めながらわりといろんなことを考えたように思う。
働き方というのか、仕事に対する接し方は人それぞれで、「凹組」の三人もそれぞれ。悩みや迷いもそれぞれなわけだけれども、読んでいて思ったのは、なぜそこでその仕事をそのようなやり方でしているのかっていうところに一つの焦点があるのかなということ。
私は居場所の確保なのかなと時々思うことがある。広い意味での仕事をするのは、ある「場」を占有するための代価かもしれないと。社会貢献とか奉仕とかっていうのではなくて、民法的な(といいつつ用語は間違っていそうだけれども)占有の既成事実化のための何か。常にそう考えているわけでもなさそうなのだけど、そう考えているときっていうのは、いわゆる「仕事人間」になっているのかしらと今ちょっと考え込んでしまった。仕事に限らず行為はだいたいそういうものなのかも。
その一方で、というか、その上でというか、やった仕事には満足したいというのも、これはわりと常にあって、ただ、なかなかそうはできないところ(自分や状況…… まあだいたいは自分自身)にイラついたりもする。ま、そんなことを考えつつ、それとは別に異業種の人と仕事ができるのはうらやましいなあとか、やっぱカメラ欲しいなあとか、単純にそんなことを思ったりもした。
結局のところ、どうだったかというと、やや甘めな展開もありつつ、ベースはちょっとシビアで、それでもって仕事が楽しそうでうらやましくて、なかなか良かったかな。
BE-TWINS
スノーフレーク
Re-born
凸凹デイズ
